不測の事態にあんぐりと弛緩する奇想曲

• No. 1297648
• ア・チャー
• 0:47

• 音源種別 : BGM(インスト)
• チャンネル : ステレオ
• データ情報 ：
  • MP3（320kbps）
  • WAV（44.1kHz24bit）
  • INTEGRATED LOUDNESS (-9.9LUFS)
• 公開日時 : 2022/08/15

※ループ仕様音源です。
主旋律を鳴らすエレキギターは、不肖ほんでぃー(ぺちこん)の生演奏録音です。

　猫に憧れる人間は数知れません。
もし生まれ変われるならば猫になりたい……そんな現実では在り得ない,
夢のまた夢を願っている人間もまた数知れません。
　そこまで猫への情熱が厚いのならば、本当に猫になった時、貴方は
「遂に願いが叶った、わーい」と何の他念も未練もなく小躍りしますか？

　或る日、とある所の或る男子学生「奏(かなで)」が、幼馴染である女子学生(響)と学校から家までの通学路を一緒に歩いた。
　奏は自宅に着くや否や自室に滑り込み、鞄や上着を床に脱ぎ捨て、いつものように好きな音楽を聴きながら寝台で横になる。ここまでは奏の屈託ない、独りの宵の日常。
　奏は部屋の片隅にある姿見にふと目を向けたら、姿見の向こうの寝台には、黒猫が寝転んでいる。
「え、こんなとこに猫」
と呟き終える前に奏は、自分が黒猫に姿が変わっている事が、手足や顔を振って分かった。
　自分の姿が黒猫そのものになってしまった。
大好きで憧憬の対象である猫に、僕はなった。
夢が、叶った。
それなのに、実感が湧かず、不測の事態にあんぐりと呆けるしかない。
　よくよく考えると。人間が猫に……いや、人間以外の動物になったら、口も舌も歯も有っても、「言葉」を発せない。
誰かに何かを口頭で伝えたくても、「にゃあにゃあにゃあ」とか「がうがうがう」とか「かなかなかな」と、言葉にならない。
　然らば、猫に変化を遂げた以上、僕は「人間」とどう会話すればいいんだ。所作挙動と鳴き声の声色を使って、大雑把な感情表現しかできない。
　どうしようもないじゃん……気が抜けるしかない。

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