ITからゲーム・アニメ・CG・声優・建築など、様々な分野で19学科を有する「神戸電子専門学校」。日本で最も歴史あるIT系専門学校で、数多くの卒業生が活躍しています。「サウンドクリエイト学科」「サウンドテクニック学科」「声優タレント学科」の3学科の責任者を務める市尾先生に、学校でのAudiostockの活用についてお伺いしました。
音楽制作やMAを学びながら、趣向性に合わせてカリキュラムを決定
市尾先生の普段のお仕事内容をお伺いできますでしょうか。
市尾先生:教員として「サウンドクリエイト学科」「サウンドテクニック学科」「声優タレント学科」の3学科の責任者をしております。授業では主に、音楽制作や効果音制作を担当しています。私自身がゲーム業界でフリーランスとして18年ほど活動していましたので、ゲームの楽曲・効果音制作と実装を軸に授業を行っています。就職活動の指導も合わせて行っていますね。
ゲーム業界に長くいらっしゃったんですね。
はい。大学を卒業してから3年ほどゲーム制作会社にいて、その後はずっとフリーランスとして仕事をしていました。20年ほど業界にいましたね。フリーランス時代は、非常勤で講師をしていましたが、10年ほど前から教員に移り変わりました。
大学では音楽の勉強をされていたんですか?
そうですね。作曲を専攻していました。それぞれの科目の先生を養成する教育大学でしたので、作曲の授業としては音楽大学とも近しい授業内容でした。
大学で学ばれていた教育に関する知識と、現場での制作経験を活かされているんですね。「サウンドクリエイト学科」と「サウンドテクニック学科」には、どういった違いがありますか?
サウンドクリエイト学科では音楽や効果音の音作りを学び、サウンドテクニック学科では音響・照明について学びます。サウンドテクニック学科は音源を自分で作るのではなく、PA技術を学ぶイメージですね。また、どちらの学科でもMAの授業を取ることができるので、放送業界を目指すことも可能です。音を使ってコンテンツ作りをする、というところは両学科ともに共通していますね。
学生さんが目指すところだとゲーム業界が多いのでしょうか?
案外そうでもないです。他にも学科がたくさんあり、完全にカリキュラムが分かれているわけではないので、なかには放送業界に進む学生もいますね。あとは、仕事としては音響とかステージの関係に就きたいけれど、趣味として音楽づくりをしたい、という学生もいますね。
最初から就職を意識した授業をするのではなく、まずは一通り音楽制作や音響効果について学んで、その後に適性に合わせて選択授業などを決めていくイメージですね。趣向性に合わせてカリキュラムを組んでいきます。アニメや放送番組の制作も行っており、それらの映像にマッチする音源を制作したり選ぶことが重要なので、そういった点も意識して取り組んでもらっています。
「フォーリー」収録が難しい音源を補うために、Audiostockを活用
御校の設備について教えていただけますでしょうか。
まずは専用のレコーディングスタジオが入っています。音楽にしろボーカルにしろ、録音はここで行います。メインのブースにモニターを2枚並べて、アフレコも行います。
プロと同じような環境ですね。その他、特色はありますでしょうか?
特色としては、映像の動きに合わせて動作音等を録音する手法「フォーリー」を用いて効果音を収録できるスペースを用意しています。「フォーリー」については最近、他の音響関係の専門学校さんでも力を入れていらっしゃいますね。
学生さんには良い環境で勉強してほしいという思いがあるのですね。
現場がどうなっているのか、ということを学校で学べないと意味がないので、少しでも仕事、プロのイメージを持ってもらいたいと思っています。学生に対して講義を行うことだけでなく、実際にプロと同じ機材が揃っているスタジオで、実践してもらうことも大事だと思います。
普段、学生さんはどのような用途でAudiostockを使われていますか?
音響効果の授業で主に使っています。サウンドクリエイト学科では、1年生の時から積極的に音源をよく使いますね。フォーリースタジオは稼働し始めてから10年、収録を行ってきましたが、音源ライブラリから素材を並べていく、ということもやるべきだと考えています。映像作品で使う音源が多いと、全てをフォーリーで収録するわけにはいかないので。
具体的にはどんな音を使うのでしょうか?
フォーリーでは収録が難しい音があるので、そういった音をAudiostockで探しています。重機の音や戦車の音、珍しい楽器の音などです。最終的には、お金と時間を天秤にかけて、なかなか収録ができないものはAudiostockの音を使わせてもらっています。
フォーリー収録を補う形でご利用いただいているんですね。Audiostockを導入しようと思われたきっかけは何でしょうか?
学生が放送業界に入ったり、ゲーム業界に入った時、実際の仕事の現場ではライブラリ音源を使用するので、学生のうちから慣れる必要があると思い、導入しました。
一つの効果音でも複数の音から選択する、という作業に慣れておかないとまずいな、と思っていました。音楽制作に特化するだけでなく、音響効果やMAなど、広く授業もしていく必要があると思っています。
就職先の間口を広げていきたい、というところなんですね。
はい。MAの授業や音響効果の担当をしていた先生も、昔はCDライブラリを買ったりしていたそうなのですが、最近はサブスクのサービスをクラウドから選ぶ、というのが一般的になってきているようですので、学生のうちから慣れてもらいたいと思っています。
「すぐに音源が見つからない」CDライブラリで発生していた音探しの手間を削減
元々は、音源ライブラリを使っていなかったのでしょうか?
基本的にはフォーリーをメインで行っていましたね。一つの映像作品に対して、MAの作業を行う時に、ライブラリを使わざるを得ないほどの尺の映像がなかなか無かったんです。必要性がなかったという感じですね。
デジタルアニメの学科では年度末にアニメ作品を作るのですが、それも4~5分なので、ライブラリがあると制作期間に対してあっという間にできてしまう、という事情もありました。なので、フォーリーで収録して1から作っていくのが当たり前、という前提がありました。
フォーリーで作れない音については、どのように探されていたのですか?
学校で所持していたCDライブラリから選んでもらっていました。あとは学生たちが、フリーのサイトから選んで使用することもありました。ただ、無料のサイトでクオリティがあまり良くないものを使っていたこともあったようです。学校のライブラリはCDで、新しいのはここ数年入れていなかったですね。
CDライブラリを使用されていたんですね。不便に感じていた点はありますでしょうか?
音源のクオリティが低いことと、音源に「すぐアクセスできない」というのがネックでした。ハードディスクに音源を納めたりはしますが、そこから欲しい音源を見つけるために、エクセルで管理したりするのが手間に感じていました。そういった経験から、CDライブラリを使うのは手間がかかるので面倒だと考えていました。
期間内の作品づくりで「後回し」が無くなり、完成度が向上
Audiostockを使い始めてからは、どうでしょうか。
学生に話を聞いてみたのですが、「音を探す」という行為の中で、たくさん数が出てくるので、その中から自分が欲しいものを見つける耳ができてきているようです。タイミング、音の高さなど、同じ音でも録音状態が良いものを見つけていく力がついていると思います。選ぶことの楽しさや面白さも感じているようですね。音に対する興味・関心を再発見できています。
あとは、以前は作品制作をする上で「自分が思った音がない」というのがストレスになっていたので、そこが解消されたようです。作品制作のスピードが上がって助かっているという声もありました。
それはよかったです。学生さんの制作物で、どんなことが変わりましたでしょうか?
特定の期間内に作り上げる際に、完成度がぐっと上がったように思います。以前はMAをしている段階で、苦手な音については後回しにしていたのですが、それが無くなりました。Audiostockは、無料音源やCDライブラリと比べて、やっぱり数があるところが良いなと思っています。
その他に、Audiostockについて「いいな」と思ったポイントなどはありますでしょうか?
曲を作る時に、Audiostockの音源をリファレンスとして活用できるところです。最近は、学生はテレビよりもYouTubeを見ている時間の方が長いので「ニュース」を作る時に、どんな曲がスタンダードなのか、イメージができないんです。なので、ニュースとか天気予報のイメージのリファレンス曲をAudiostockで探したりしています。イメージができない学生がいるときには、検索して聴いてもらったりしていますね。
音のイメージを知る場所として活用いただいているんですね。面白いですね。Audiostockの権利面では、安心してご利用いただいていますでしょうか。
そうですね。学校での制作であれば使用OK、という括りで学生にも理解してもらいやすいので、ライセンスの確認の手間が省けて助かっています。
あとは、以前に教員向けの権利セミナー(※1)もしていただいたと思うのですが、とてもありがたかったです。SNSを使った広報戦略も多くなっているので、権利についての理解を深めることは大事ですよね。
(※1)ご契約をいただいた各学校様向けに、希望制で説明会などを開催させていただいております。ご興味をお持ちの方はこちらからお問い合わせください。
セミナーも好評だったようで、よかったです。Audiostock導入に向けた予算の確保は大変だったのではないでしょうか。
そもそも学生がちゃんとした音源ライブラリを持つべき、という認識はあったので、問題なかったです。そろそろちゃんとした音源を使いたいな、という時でしたので、タイミングとしても良かったと思っています。
最後に、Audiostockに期待することはありますでしょうか?
これはちょっとオーダーになるのですが、できれば英語で音源を探せるといいなと思っています。例えばゲーム会社で海外の方とやりとりをしたりする可能性を考えると、英語での検索ができると、学生のうちに予め慣れていくことができると思いました。
あとは、日本語であっても、曲のイメージと違うタイトルがつけられていて、少し主観が強いなと感じることがあります。そういった部分では効果音は大丈夫なのですが、BGMはひょっとすると検索を難しくしている理由になっているかもしれないですね。
ご意見を元に、改善を検討してまいります。ありがとうございました!